5期生のゆうきです。
今回はレベル1Aの第4週のクラスでした。
〈スタニスラフスキーシステムの分析〉
前回に引き続き、スタニスラフスキーシステムの
精神と身体の関係性
コミュニケーション
アンサンブル
テンポとリズム
外的形象化
行動の正当化
行動の流れ
感情の流れ
台詞の喋り方
信頼
真実
についてチェックを行いました。
外的形象化とはいわゆる役作りのことで、スタニスラフスキーの時代の役作りは内面よりも外面から入っていくスタイルだったそうです。
役を演じる上で前回のものと合わせてこれだけ多くのことを同時に意識しなければならないのは本当に気が遠くなりそうですが、それをマスターした人が本当の超一流になっていけるのだなと感じました。
〈スタニスラフスキーの歴史〉
本名 コンスタンチン・セルゲーエヴィチ・アレクセーエフ(1863〜1938年)
スタニスラフスキーは裕福な家庭に育ち、幼い頃からオペラやバレエ、サーカスなど本物の芸術に親しんでいました。
そのため、1885年に演劇学校に入学したものの、その学校のレベルの低さに失望しすぐに退学してしまいます。
その後、1887年にThe Society of Art and Literatureを創設し、役者としてのみでなく演出家としても実力をつけていきます。
1888年にプーシキンの作品を上演した際には
- キャラクターの演技と素の演技の違い
- どのようにイマジネーションや創造的な意志を刺激すればいいか
- どのように演出家の考えを取り入れればいいか
と考え、これが後のsystemの芽生えとなっていきました。
1については、キャラクターとしての演技が100%であることが望ましいのかと思ったのですが、その人にしかできない演技、その人が演じる意味は何かといった点で素の演技も必要だそうで、バランス良くブレンドすることが大切だそうです。
2については、スタニスラフスキーは実際に牢屋の中に入ってみたそうです。
今では役作りのためにそうした体験をするのは珍しくありませんが、当時は「そこまでするなんて!」と思われたかもしれませんね。
3についてはディスカッションしながら作り上げていくことが理想ですが、演出家至上主義の現場などでは役者はもどかしさを感じてしまうかもしれません。
1898年にはネミロヴィッチ・ダンチェンコと共にモスクワ芸術座を創設し、芸術の世界では歴史的出来事となりました。
その翌年の1890年、ザクセン・マイニンゲン一座のロシア公演を観たスタニスラフスキーはそのアンサンブルの凄さに衝撃を受け、
- トータル的なtheatre productionとしての意識
- life of the human spirit(人間の魂からの人生・生活)の意識
をどうすればバランス良く高めていけるかを模索し始めますが、1を重視するダンチェンコとの間には確執が生まれていきます。
その後、1906年のヨーロッパ公演の失敗を機にフィンランドでの静養生活に入り、systemについて再度模索することになりました。
- Actor Training – the work on the self(俳優訓練)
- Rehearsal Training – the work on the role(演出稽古)
1928年に心臓病で役者を引退することになった際は、他の俳優達がスタニスラフスキーの考案したTable Analysisを行いますが、議論ばかりで先に進みませんでした。
それに業を煮やしたスタニスラフスキーは、
「忘れること、捨てること」
「動いてみること」
が重要であると言いました。
1934年にはスターリンによって system が国の公式俳優訓練に指定されましたが、それにより他の手法を使っていた俳優などは国外へと活動拠点を移さざるを得なくなりました。
1935年にthe Opera Dramatic Studio を設立。
Table Analysis よりもインプロを使うActive Analysisを採用し、
精神、身体、感情を同時に使うことを生涯の追求としました。
「Here, Today, Now」(常に新しく創る、常に生きる)
そして Method of Physical Action を構築しました。
1938年 スタニスラフスキーは永眠します。
このように、スタニスラフスキーの生涯を知ることはただの歴史ではなく、役を生きる上での重要な要素を知ることでもあります。
「なんでもない人間の生活を舞台に持ってくるためには、大変な努力、莫大な研究、習慣の発達、或る技術が必要なのだ」
なんでもない人間の生活だからこそ、普段無意識に行っていることを意識に行って研究することが必要になってくるんですね。
役を生きられるようになるためにやるべきことは本当に莫大ですが、一つ一つ積み重ねていきたいと思います。
最後にスタニスラフスキーの著書を紹介しておきます。
・My Life In Art(邦題:芸術におけるわが生涯)
・An Actor Prepares(邦題:俳優修業 第1部)
・Building A Character(邦題:俳優修業 第2部)
・Creating A Role(日本未翻訳)