こんばんは、工藤です。
本日は春のワークショップのブログを書きます。
今回のテーマ
「映像演技のセオリーと生きた演技への導き方」
私は、声優→ナレーターなので、本当に顔を出そうと思って生きておらず。
2021年頃WIASのレベル1クラスで映像撮られてワークをするのも本当に嫌だったのですが、ワークショップなら気が楽だし、演技は勉強しておきたいと思って参加してみました。
結果から言うと、参加してみて良かったです。
今回、私も含めて映像演技の経験がほぼないけれど、舞台は経験のあるメンバーと映像も舞台もされるメンバーが参加しておりましたので、まずは「映画と舞台の12違いについて確認。
【映画と舞台の12違い】
- 稽古回数
- 声量
- 台詞量・性質
- 画角・見え方
- 再現性/一回性
- クローズアップの有無
- 再現性
- シーン替わりの方法
- 機材
- 小道具
- シーン替わりの演出
- 撮影後の編集
1.稽古回数
映画はテクニカルリハ程度な一方、舞台はたくさん稽古をします。
2.声量
映画は自然、舞台は大きな声を飛ばします。
3.台詞量・性質
映画は状況で描写して、台詞を省く傾向があり、舞台は台詞で説明します。
4.画角・見え方
映画はカメラ側がよく見えるように撮る位置や画角を考える。舞台はお客様から顔がよく見えるように、身体を客席側に開いたり、工夫が必要。
5.再現性/一回性
映画は順番を入替えた撮影ができ、何度もテイクを繰り返して演じられる。舞台はノンストップで止まらない、演技は一度きり。
6.クローズアップの有無
映画はクローズアップがあり、表情のみでの演技も求められる。舞台はクローズアップがなく、常に全身を意識して演じなければならない。
7.再現性
映画は撮影の事情で同じ演技を繰り返す必要があり、演技(位置や持ち物など)を覚えておく必要がある。舞台は本番によって多少演技が変わっても良い。
8.シーン替わりの方法
映画はカット割りや絵コンテを必要に応じて用意する。舞台はではけ(入退場)がある。
9.機材
映画はカメラ・照明・マイク・レフ板などを使って撮影する。舞台は照明・音響などを入れて上演する。
10.小道具
映画ではパントマイムでは演じず、小道具を用意する。舞台では舞台美術や小道具も使うが、一部はパントマイムで演じる
11.シーン替わりの演出
映画では必要に応じて繋ぎのインサートを用意する。舞台では音楽や照明でシーンを繋ぐ。
12.撮影後の編集
映画は撮影後の編集が必要。舞台は生モノなので編集は不要。
そして、映画で使う「ショット」について、よく使う5種類を確認しました。
【ショットの違い】
- Extream Closer Shot
- Closer Shot
- Middle Shot
- Three Quarter Shot
- Estblishing Shot (=Long Shot / Wide Shot)
1.Extream Closer Shot
目元だけ、口元だけ、などピンポイントをクローズアップしたショット
2.Closer Shot
顔をクローズアップしたショット
3.Middle Shot
へそより上、上半身の動きが映るショット
4.Three Quarter Shot
膝より上、背景や相手役、周りの人も映り込ませることができる。
5.Estblishing Shot
全身が映り、縦横の動きにも対応可能。背景や周りの人物を多く映り込ませることもできる。
実際に様々な映画をチラチラと見ながら確認しました。
例えば…
「グレイテストショーマン」
→主人公と幼馴染の草原のシーンでは動きもありつつ、表情も見えやすいThree Quarter Shot。
乱闘シーンなどはEstblishing Shot。
たくさんの人が集まって、打ち明け話をするシーンではCloser Shotでありつつ、フォーカスが移るなど高度な演出が見られました。
「博士と彼女のセオリー」
→ホーキンス博士の病状の描写も必要なため、Middle Shotが多めでしたが、
家庭の日常を切り取ったようなシーンではホームビデオのようにCloser ShotやMiddle Shotで人物を追いかけるシーンもありました。
プロらしい、上質な、品位のある、高級感のある、ショット=演出ももちろん必要ですが、一方でどうするとホームビデオっぽい、素人っぽいということを分かっているか?ということも良い作品を作る上で必要な知識、技術だと認識しました。
これについては、ナレーションも同じで。そういう遊び心が活きたものに出会うと大好きになっちゃうんですよね。少し前からプロがプロらしく読むよりも、素人に読ませた方が本音っぽくて良いなんて風潮があったりして。わざと下手に読む練習をしたりもするんです。あとは、先日放送されていた芸能人一家の家族旅行密着ドキュメンタリーのナレーションがどことなく下條アトムさん風だなとか。気付かなくても普通に面白いけど、気付くとやってんな!って益々面白い。
少し前の映画ですが、「カメラを止めるな」でも変なカメラワークをして弄っているシーンがありましたよね。これから映画を観る時にそういう遊びを共有できると思うとわくわくします。
「ある男」
→肩越し、扉越し、真横からのショットなど、あまり観ないアングルが多く、挑戦を感じました。
あとは今回授業内では観ていませんが、
私の大好きな岩井俊二監督の過去作短編ドラマで、冒頭に長いワンカットが続くシーンがありました。とある家庭の朝の風景を食事の仕度をするお母さん、バタバタ喧嘩する兄弟そのずっと奥の部屋に介護を待つお婆さん…とワンカットで繋いでいく作品でした。冒頭で絶え間なく、シーンが続くことで視聴者をぐっと引き付けることができる。そういう意味で登場人物紹介をワンカットで済ませられる演出は理論的にもお見事だったんだなと改めて、感心してしまいました。
続いて、そんな意図を持って演出されているショットをどのように活かすことができるのか。
【ショットによる演じ方の違い】
同じシーンをCloser Shot、Midle Shot、Estblishing Shotの3段階で撮るとしたらどんな演じ方が有効なのか。
まずは喜怒哀楽の「喜」。
お題は
・ようやく晴れた
・長時間の仕事が終わった
・試験に合格した
・ターゲットの暗殺に成功した
(・好きな相手から良い返事がもらえた)
今回4名参加だったので、1人ひとつ、4つのお題に挑戦しました。
みんな探り探りでしたが、舞台と大きく違うのはやはり表情がきちんと映る角度を意識すること。
Closer Shot、Midle Shotでは大袈裟に動くと顔が上を向き過ぎたり、下を向き過ぎたり。私はもう前髪が邪魔すぎたので、留めました。
Estblishing Shotでは、背景や他人についても意識を払うとより効果的だと分かりました。
次いで、「怒」。
怒はお題なしで、思い思いに演じました。
みんなの怒ポイントが面白かったり、
WIAS生ゆみえさんは
Closer Shot、Midle Shot、Estblishing Shotで
部屋の外→部屋の入り口→部屋の中3部構成に話が進んで、本当に面白かったです。
先生的には意図と違うみたいですが、インプロなのにショットを意識したら構成まで変わっちゃって名作ができるなんて面白い。
【実践】
別役先生が書かれた戯曲「海岸線に見る光」のシーンを使った演技を様々なショットで撮ってみました。
女性3人のシーン。
台詞を覚えながら軽く掛け合いをした後に、
動作や位置を固定しました。
そして、いざ撮影。
2チーム3カットずつ撮りました。
3回とも同じ位置、動作、台詞にしないと後で辻褄が合わなくなってしまうから、全てを正確に。
でも腐敗したものにならないように。
これが思っている以上に難しい。
そんな感じで撮ったものを観ましたが、
大人数になればなるほど、
どこかで間違いが発見されてしまいました。
手を振り回したり、細々した動作が増えれば増えるほど再現が難しくなることがわかりました。
さらにもし自分が監督なら…
受け芝居でもいいので、一人ずつの抜きショットを撮っておくと、辻褄合わせの逃げ道として有効だということも分かりました。
【まとめ】
こういう苦労を知って、また色んな映画を観たいな〜と思っています。
そして、余談ですが。このブログは翌日のレッスン後に書いています。今日のI want,Imageの授業にて、映像で活躍しているWIAS生=ゴンちゃんはショットとかアングル使い分けてるな〜と凄く感じました。インプロの内容自体はめちゃくちゃでもちゃんとして観えるのは見せ方だったのか。なるほど…と気付けたので、今後私はそうやって人の演技を観るんだろうなと思います。
夏のワークショップも楽しみですね〜
最後までご覧いただき、ありがとうございました。